■2000年行政書士試験・法令記述式問題

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■憲法(2000−36)【判例問題】

次の文章は、ある最高裁判決の1節である。これを読み、A)B)(漢字各2字)にあてはまる最も適当な語句を記入しなさい。

一般に許可制は、単なる職業活動の内容および態様に対する規制を超えて、狭義における職業の(A)の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の(B)的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容および態様に対する規制によっては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。

■解説

本問は、薬局の開設に適正配置を要求する旧薬事法6条2項および広島県条例の規制の合憲性が争われた、薬局距離制限事件(最大判昭和50年4月30日)がもとになっている。

A) 「選択」。職業選択の自由(憲法22条1項)の保障には、「自己の従事する職業を決定する自由」(狭義)及び「営業の自由」(広義)の保障が含まれる。本問の判旨では「狭義」となっているので「選択」がはいる。

B) 「積極」。B以降は最高裁の合憲性判定基準が示されている。最高裁は、問題となっている立法の規制が積極目的消極目的なのかを区別し、それぞれに対応する違憲審査基準をあてはめる態度をとっている。
最高裁は、本件薬事法の距離制限について、それを消極目的規制と認定し「厳格な合理性の基準」を用いることで、旧薬事法6条2項を違憲としている。

なお厳格な合理性の基準とは、裁判所が規制の必要性、合理性をおよび同じ目的を達成できるより緩やかな規制手段の有無を、立法事実の有無に基づき審査するものである(大雑把には、違憲推定原則のないLRAの原則が厳格な合理性の基準である、と言えよう)。本問については、芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第3版(2002年、岩波書店)206−208頁、佐藤幸治『日本国憲法論』(2011年、成文堂)301−302頁参照。

■行政法(2000−37)【理論問題】

下記の3つの文章のワク内に、行政法の専門用語を入れて完成しなさい。次に、A、B、Cに相当する漢字各1字を、後記の解答用語欄の当該部分に入れ、未記入部分を推測して、法学上の専門用語を完成させなさい(解答は答案用紙に記入すること)。

1) 国民に一定の行為をしてはならない義務を課す命令的処分を(A○)−○は空欄で1語が入る。Aに1字、○に1字を入れ2字からなる専門用語を作る。管理人注−という。

2) 処分の名宛人でない第三者が、処分が適正に行われることによって受ける利益は、(B○○○○)であり、法が直接に保護する利益ではないとされてきた。

3) 申請に対し、形式上の要件を審査するだけで、有効な国民の行為として認める行政庁の処分を(○C)という。

解答用語欄 (AB○の法C)

■解説

1) 「禁止」。Aに相当する語は「禁」となる。この禁止は、「不作為」を命じるものであり、公定価格超過販売を禁止すること、などが例として挙げられる。田中二郎『新版行政法上巻』全訂第2版(1974年、弘文堂)121頁。

2) 「反射的利益」Bに相当する語は「反」となる。ちなみに反射的利益の反義語を「公権」(直接自己のために一定の利益を主張しうべき法律上の力)という。前掲田中84頁。

3) 「受理」が入る。Cに相当する語は「理」となる。前掲田中125頁。なおこの点につき行制手続法7条に注意。

解答用語欄を完成させると(禁反○の法理)となり、ここから推測すると答えは「禁反言の法理」になることがわかる。禁反言の法理は、民法の信義誠実の原則を具体化したものであり、「自らの言動によってある事実の存在を相手に信じさせた者は、相手がそれを信じて自己の利害関係を変更した場合、その者に対して当該事実の不存在を主張できないとする原則」(内田貴『民法T』第2版〔1999年、東大出版会〕171頁)である。

■行政手続法(2000−38)【条文知識問題】

次に示す行政手続法上の「行政指導」の定義のうち、A)B)に当てはまる語(漢字各2字)を記入しなさい。

「行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、(A)、助言その他の行為であって(B)に該当しないものをいう」。

■解説

行政手続法2条6号は以下のように定める。

行政指導 行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

正解はA)勧告、B)処分である。

■行政書士法(2000−39)

■解説

現在行政書士法は試験科目ではないため、問題文の掲載、解説を省きます。

■民法(2000−40)【理論問題】

以下の文章中の空欄に入る法的主張を20字以内で答案用紙の解答欄〔 〕に記入しなさい。

Aは、未成年者B(18歳)と不動産の売買契約を締結した。Aは売買契約の締結に際して、Bが未成年者でないかどうかBに確認したところ、Bは生年月日を書き直した戸籍抄本を提示したので、それにより成年者であることを確認した。Aに落ち度がなかったとした場合に、Aは、Bの行為が詐術に当たるとすると取消権不存在を、欺網に当たるとすると詐欺による取消しを主張できるが、この他に、違法に当たるとするとBに対して〔 〕を主張することも考えられる。

■解説

1) Bは未成年者である。未成年者は制限能力者とされ、行為能力が制限されている。

まず未成年者が法律行為をなすには、その法定代理人の同意を要する(民法5条1項本文)。未成年者Bは、法律行為である本件不動産売買契約をなすには、Bの両親または未成年後見人(818、838条)の同意を得ておかなければならず、同意を得ずにした契約は取消しうべき契約となる(5条2項)。

2) Bは、上で述べた法定代理人の同意を得ていない。そのためにBはAに「生年月日を書き直した戸籍抄本を提示し」、成年者であると偽ったのである。

3) 前述のように、未成年者が、法定代理人の同意を得ずにした契約は取り消しうべき契約となるが、未成年者が成年者であることを信じさせるため詐術を用いた場合、この取消権はなくなる(21条)。なおこの場合、制限能力者の相手方が、制限能力者を能力者と誤信しなければならない。Aは、Bが「成年者であることを確認した」(しかもこの点落ち度がAにはない)とあるので、この要件もAは充たしていると考えてよい。

4) 本問においてAを救済するには、問題文にあるように、詐術による取消権不存在の他詐欺(96条1項)を取消しも考えられるが、〔不法行為を理由とする損害賠償請求〕をなしうる。よって本問の答えはこれになる。

古い文献で申し訳ないが本問については、我妻栄『新訂民法総則』(1965年、岩波書店)91頁を参考にされたい。